第1章

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今日も今日とて、お弁当がうまい! 秋晴れの澄んだ風が心地よく吹き込む窓際の席で、僕、立花裕(タチバナユウ)はお手製のお弁当を機嫌よく平らげていた。 そんな僕の目の前には親友の結城真志(ユウキシンジ) が大きなメロンパンを頬張りながら、メンズファッション雑誌の表紙を舐めるように見ている。 「すっごい腹筋。やっぱ人気者の躰は美しいねぇ」 まるでどっかのエロ親父みたいな言い方に呆れてしまうけれど、いつものことなのでスルーである。 見た目はちっこくて可愛い結城は黙っていればお人形のようなのに。 ホント、残念なことこの上ない。 「そのモデルさん、先月号でも表紙じゃなかった?」 大好きな甘い卵焼きを堪能し終えた僕は、結城が凝視している雑誌の表紙へ視線を向けてみた。 確かに結城の言う通り、綺麗に割れた腹筋を持つ引き締まった躰のモデルさんだ。 だからって決してゴツ過ぎるわけでもなく、細めに絞られ、綺麗に小麦色に焼けた上半身はエロ親父結城でなくても、感嘆してしまう。 「そ。今超人気でこの“ジョー”が表紙の雑誌は男女関係なく購買意欲を掻き立てるらしいよ」 “ジョー”というのがこのモデルさんの名前らしい。 「なるほどね。確かにカッコイイ躰だもんね」 「いやいやいや!立花、躰だけじゃありませんよ、ジョーのこの整い過ぎたフェイス!ちゃんと見なさいって!」 表紙をこちらに向けて立て、力説する結城に苦笑いが零れる。 君はどこの回し者ですか? ジョーってモデルさんの関係者ですか? そう内心でツッコんで、結城の指差すモデルさんの顔をじっと見た。
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