第1章

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「うわぁ、ジョーって高2だって。僕らと同じなんて信じらんないね。ね、立花」 僕の不服は無視しておいて、ジョーの話題は振って来るって何なんでしょうね。 でも僕もそんな結城には慣れっこだし、引きずる性格でもないからそこはちゃんと受け答えしてあげるよ。 「そうだね。同い年って感じじゃないね。すっごく大人っぽいもんね」 「ねぇ~。僕ジョーにだったら抱かれたいかも」 「はあ?」 「ブッ!」 結城の問題発言に顰めっ面して上げた僕の声に被さるように、後ろの席から飲み物を吹き出す音が聞こえた。 「・・・ゴホッ、ゴホ」と苦しそうに咽る音に僕が後ろを振り返えると、僕の後ろの席で城ノ内智也(ジョウノウチトモヤ)がペットボトルのお茶を握り締めて咽返っていた。 「城ノ内、大丈夫?ほら、結城が変なこと言うから城ノ内まで被害を被ったじゃない」 「えぇ、別に変なことじゃないよ。ホントにそう思うんだもん」 「結城がどう思おうと勝手だけど、そういう発言は学校のお昼休みに言うことじゃないでしょ!・・・あぁ、ホント大丈夫、城ノ内?」 まだゲホゲホと苦しそうに咳き込む城ノ内の背中を擦ろうかと手を伸ばしかけたところで、城ノ内はその僕の手を察したように、右手を上げて僕を制した。 「だ、大丈夫だ、から。気にしないで・・・ごめん」 少しボソボソした話し方をする城ノ内は、まだ少し苦しそうな息遣いでそう言うと、一つ大きめの咳払いをして僕のことはもう眼中にないとばかりに机の上の惣菜パンに手を伸ばした。 俯き加減でパンを食べる城ノ内は、長めの前髪のせいでその表情を窺うことができない。 長めの前髪の下にある黒いセルフレームのメガネが余計に彼の表情を見えなくさせていた。 「ホント、ごめんね、城ノ内」 城ノ内が人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しているのはいつものことで、誰に対してもそうなんだけど、僕はちょっぴり寂しく感じながら、もう一度謝ると、大人しく席について彼に背を向けた。
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