第1章

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城ノ内はちょっと変わったヤツだと思われている。 確かに見た目は外見を気にする今時の男子高校生にしては、無頓着というか逆行しているというか。 天然なのかどうなのか、緩いウェーブのかかっている髪はボサボサで。 長めの前髪と黒いセルフレームのメガネのせいで、彼の目は人目に触れないようになっている。 しかもクラスメートともそれ以外の生徒とも全くと言っていいほど、親しくするつもりがないらしく、いつも人を寄せ付けないオーラに身を纏っている。 だからなのか、ほとんどの生徒は彼を影の薄い、存在感のないイケてないヤツと認識しているし、そういう扱いをしている。 でも本当にそうなのか? 城ノ内は本当にそんなヤツなのか?? 僕にはそうは思えない。 だって、城ノ内は以前僕を助けてくれたことがあるから。 その時の彼は確かに見かけはそのままだったけど、どこか凛とした雰囲気を纏い、いつもとは違うはっきりとした声で僕を強引な先輩から救ってくれた。 長い前髪とメガネの奥の瞳も表情もは伺い知ることはできなかったけれど、きっと・・・そう思う程、あの時の城ノ内はカッコよかったんだ。 強引な先輩の魔の手から僕を救ってくれた城ノ内はすぐにいつもの彼に戻って、ボソッと『気をつけて』とだけ残して行ってしまって、一人残された僕はしばらく呆然としていた。 普段とは違って見えた城ノ内の姿と声が頭から離れなくて。
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