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千明くんが真剣な顔で私と向き合う。
私も千明くんの顔を見た。
「何年かかるか分からない。それでもいいなら、俺と結婚すること前提で付き合ってほしいんだ」
結婚……結婚!?
考えてもなかった言葉に一瞬頭がショートする。
ずっと千明くんを待ってるって事だよね。
そんなの答えは決まってる。
私は頷いた。
「はい」
「いいの?」
「うん」
「本当に何年かかるか分からないんだよ?」
「いいよ。だって私はずっと千明くんを忘れてたんだもん。それでも千明くんは私に怒らなかった」
「だってそれは莉愛何も悪くないから……」
「それでも私は嬉しかったの。だから私に出来ることがあるならなんでもしたい。千明くんの願いならなおさら。それに私も一緒にいたいから」
「莉愛……」
「私は教師になりたくて頑張るけど、千明くんは自分のやりたいようにやって!私は応援するから!」
私はアップルパイにかぶりついてそう言った。
千明くんは私の頭を撫でると嬉しそうに笑った。
やっぱりこのお菓子は私を幸せにしてくれる。
君を好きになったこのお菓子はまた私に嬉しい物を引き寄せてくれた。
莉央のわがままで引き受けた入れ替わりの生活。
私は少しでもみんなの力になれていたんだ。
莉央が提案してくれて良かったな、なんて思いながら私は千明くんに笑顔を向けた。
莉央達の居る場所まで戻ると莉央が手を振ってくれる。
私は莉央に近づいて小声で話した。
「莉央。また入れ替わりたくなったら言ってね。喜んで引き受けるから」
驚く莉央。
それからおかしそうに笑った。
双子の入れ替わり生活は、とても嬉しい物を引き寄せて幕を閉じた。
それから何回か入れ替わって生活した事は……また別のお話です。
それでは皆様、またいつかお会いしましょう。
そのときは美味しいお菓子を用意して、莉央なのか莉愛なのか見破ってくださいね。
~END~
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