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「恐らく熊ちゃんも忘れてたと思うんだけど、今日入れ替わるのはまずかったかもね」
「え?何?お茶会ってふざけた名前なのに何か重要な事なの?」
「重要も重要。お茶会っていうのは、名だたるパティシエール達が三ヶ月に一回この学校に集まって、授業を受けてくれるかくれないかを議論する特別な会議なんだ。この会議はとっても重要でね。そこに出されるお菓子は生徒の作ったものでないといけない決まりがあるんだ。そのお菓子の出来で授業をしてくれるかどうかが決まる。だから先生達はこの三ヶ月で最も優秀なお菓子を作れたチームにお菓子作りをお願いするんだよね」
「それに、莉央達は……」
「うん。お願いされてたのすっかり忘れてたよ」
「そんな呑気にしていいものなの!?ダメだよね!?だってこのお菓子で有名なパティシエールからの授業を受けられるかどうかが決まっちゃうわけでしょ!?」
「そうだよ?でも今まで1度も実現した事ないんだけどさ」
「へ……?」
「なかなか首を縦に振ってくれないんだよ。やっぱり生徒が作ってるものだから、プロからしたら、ねぇ?」
如月勇気はヘラヘラ笑いながら歩き出す。
私はただ青ざめるしか出来ない。
今まで実現したことないから先生達は期待してるんだよね?
そりゃ、水瀬千明いるし?
確かお父さんがパティシエールで……。
「あれ?じゃあ水瀬千明のお父さんも来るのかな……?」
首を傾げて私も如月勇気の後をついて行った。
実習室には既に水瀬千明の姿。
私達を見るとため息をついた。
「遅い。どんだけ重役出勤なんだよ」
「ごめーん、水瀬ちん。俺も熊ちゃんもすっかり忘れててさー」
「ったく。能天気なヤツらだな、相変わらず」
水瀬千明は私をジッと見るとフッと笑った。
イケメンに微笑まれるとか初めての経験だ。
「な、何?」
そう声をかけると水瀬千明が自分の頬をつついた。
「土、ついてんぞ」
「え!?」
慌てて拭うと確かに土がついていた。
さっきの五木大翔の騒動のせいだ。
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