パティシエール専門学校へいざっ!

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雰囲気に気圧される私の横をスタスタ歩いてテーブルにクッキーシュークリームを置く水瀬千明。 頭を下げて部屋から出ようとすると 「待ちなさい」 という声が聞こえた。 な、何? 不思議に思って会議室全体を見渡す。 すると1人の男の人が歩いてきた。 とてもカッコイイ男の人。 なんだか、水瀬千明をそのまま大きくしたような……。 「これは、お前が作ったのか?千明」 「……はい。お父さん」 「おとっ……!?」 驚いて声を出してしまう。 慌てて口を塞ぐと隣で笑いを堪える如月勇気と目が合った。 この顔、絶対馬鹿にしてる。 水瀬千明とお父さんが見つめ合う。 お父さんはため息をつくとお皿を持って水瀬千明の手に乗せた。 え……? 「食べる気にもならないな」 「……どういう意味でしょうか」 「お前のような出来損ないの半端者の作ったものなんて食べられないって言ってるんだ。早く下げろ」 冷たく水瀬千明を見下ろすお父さん。 悔しそうに唇を噛み締める水瀬千明。 その姿が自分と重なった気がした。 水瀬千明も、同じか……。 親の愛情を知らず、親の名前で判断され、自分自身を見てもらえない。 可哀想? 違う。 自分は自分だと、開き直れてないだけだ。 私は水瀬千明とお父さんの前に立った。 目を見開く水瀬千明とお父さん。 私はゆっくり深呼吸をした。 「お言葉ですが、1口も食べてないのに判断するのは失礼ではありませんか?」 「君は?」 「果たしてお教えする必要がありますか?僕はただの未熟な半端者です。知っていても無意味かと」 .
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