『お前は見込みがある』

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まぁ、ね。 私が喧嘩を吹っ掛けたのに間違いはない。 だって許せなかったんだもん。 でも、だからって……。 「……おと…、水瀬さん……。ガン見されると上手く出来る気がしません……」 「あんな出来損ないのカスタードクリームを食べさせといて何を」 「いや、本当にすいませんでした」 水瀬千明のお父さんが三ヶ月の特別講師を引き受けてくれる事になって、生徒は全員が驚いていた。 周りから『嘘だろ?』とか『どんだけ金積んだんだよ』とか聞こえてきたのは言うまでもない。 でもこれは事実で、しかもお金なんて積んでない。 いや、実際はお金の問題が発生してるのかもだけど。 でもそれだけ水瀬千明のお父さんは凄いパティシエールだという事に気付かされた。 私はとんでもない人に喧嘩を吹っ掛けたんだと理解出来る程には頭がいいらしく、青ざめたのは間違いない。 で、だ。 その水瀬千明のお父さんによる特別授業の真っ最中なんだけど……。 なんでずっと私の後ろに立ってんの!? てかもうカスタードクリームのクレーム何回目だよ!! さっきので軽く10回は超えたよ!? 「熊ちゃん……、集中攻撃……っ」 「聞こえてるからねー?勇気くん?」 必死で笑いを堪えている如月勇気を笑顔で見る。 本当は睨みたいが私は今『莉央』だからそんな事は出来ない。 笑顔で威圧をかけるしかない。 そしてどうして今日に限って『ガトーショコラ』とかいうオシャンティーな食べ物なわけ!? そりゃお菓子作り全般無理だけど!! そんな奴にやらせるお菓子じゃないだろ!! 「なんだ?チョコレートも上手く溶かせないのか?何故お前みたいな奴が千明と同じ班なんだ」 「くっ……!」 悔しいが言い返せない。 このままでは莉央の評価がどんどん下がってしまう。 それだけは何とか阻止しないと……。 .
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