81人が本棚に入れています
本棚に追加
「す……好きな人……?」
「うん……っ」
「その……。莉央の好きな人は、私の行ってる学校にいるの……?」
「うん……っ。莉愛もよく知ってる子……っ」
クッションからチラッと私を見る莉央。
私がよく知ってる人?
そんなの沢山いすぎて分からない。
ポカンとしていると莉央が恥ずかしそうに私を見ながら続けた。
「莉愛の友達の……柊さん……っ」
「え!?柚葉の事!?」
柊 柚葉(ひいらぎ ゆずは)は私の親友。
莉央みたいな可愛い雰囲気で女の子っぽい、The 女子。
確かに見た目も可愛くてモテモテだけど、柚葉はとてもドジで天然だ。
告白されているのに気付かないという、漫画の世界でしか見た事ない展開を見せてくれる。
「柚葉は……、難しくないかな……?」
莉央にそう伝えると莉央は首を横に振った。
「告白したいとか、付き合いたいとか、そういうのじゃないんだ。ただ、柊さんの側に居てみたいっていうか……」
「だったら入れ替わらなくても私が柚葉を家に呼べば済む……」
「そうじゃないの!もぅ!!」
怒って頬を膨らませる莉央。
可愛い。
今すぐ撫で回したい気分だ。
「莉央がしたい事がよく分からないけど……。1回だけでいいならいいよ?」
そう言うと莉央の顔が明るくなった。
また私は莉央に負けた。
この笑顔が見たいから言うこと聞いちゃうっての、やめないとなぁ。
ため息をつきながら、喜ぶ莉央を見て微笑んだ。
そして、その入れ替わりは次の日から始まった。
髪の毛は同じショートカットだし、顔は元々同じだし、制服を替えて鏡を見れば、私はどこからどう見ても『莉央』だった。
これなら誰にも分からないかも……。
部屋を出てリビングへ行くとお母さんが私を見た。
.
最初のコメントを投稿しよう!