初恋のアップルパイ

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朝。 起きるのが苦手な私は最近苦労していた。 何故なら莉央の通っているあの学校が少し遠いから早起きを義務づけられているからだ。 しかも私は『莉央』として学校に行くわけで……。 「『莉央』おはよう。朝ごはんはフレンチトーストにしてみたの」 お母さんが作ってくれている朝ごはん(莉央の分しかない)を食べないといけない。 ……まぁ、ありがたいんだけど。 今まで朝ごはん抜きで学校行ってたわけだし。 私は莉央の笑顔を貼り付けてフレンチトーストを食べた。 「お母さん、フレンチトースト作りすぎ……」 口の中が甘くなりすぎて気持ち悪い。 私は近くの公園のベンチで休んでから行く事にした。 まだ朝が早いから誰も公園にはいない。 鳥の声しか聞こえないその公園はとても居心地がいい。 ボーッと空を見上げていると……。 「あれ?莉愛?」 不意に名前を呼ばれて反応してしまった。 私に声をかけてきた人物を驚いて見つめると、その人は私の友達である柚葉だった。 女の子特有のいい匂いをまといながら近付いてくる柚葉。 ちょっと待って。 私は今、莉央だよ? 柚葉には分かる…… 「あれ?違ったや。弟くんだよね?莉愛の」 思わずズッコケそうになる。 だよね。 柚葉がそんな鋭いわけない。 苦笑いを浮かべて柚葉を見てから『あれ?』と思った。 なんで柚葉、莉央の事知ってるの? そりゃ柚葉には莉央の事を話した。 でも会ったこと、あったっけ? .
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