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まずはここだ。
お母さんが気付かないなら完璧なはず。
お母さんが私に『話し掛けたら』成功だ。
「お……、おはようっ!お母さん!」
莉央のテンションでお母さんに話し掛ける。
ドキドキしてる心臓おさまれー!!
引き攣る笑顔をお母さんに向けるとお母さんが笑ってくれた。
「おはよう、『莉央』。ご飯出来てるから早く食べちゃいなさい」
お母さんは気付く様子もなく私を『莉央』だと信じきっている。
ご飯なんて、今まで用意されてなかったのに。
……お母さんが気付いてないなら、聞けるだろうか。
「お母さん……」
「どうしたの?莉央」
「えっと……。お母さんは、莉愛の事……」
「そうだわ、莉央。莉央がこの間言ってたお菓子作りの本買ってきたわよ。学校に持って行くなら持って行ってね」
「……っ。うん……、ありがとう……」
やっぱり、お母さんの中では私なんてとっくに『消されてる』。
仕方ないといえば仕方ないけど。
私は莉央を『殺しかけた』んだから。
私はただボーッとご飯を眺めていた。
ご飯を食べて莉央から教えてもらった道を進んで莉央の行っている学校へ向かった。
莉央が行ってる学校はパティシエの専門学校。
男女別で教えて貰えて、そして何より高度な技術を身につけられると評判の学校だ。
高校生だけのパティシエ専門学校はここだけ。
莉央、本当にお菓子作りが好きなんだな。
私は小さく気合を入れて校門をくぐった。
莉央から貰ったメモを見て教室を目指す。
「教室は基本的に調理場……。調理場って何?」
眉を寄せて首を傾げる。
するといきなり後ろから抱き着かれた。
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