81人が本棚に入れています
本棚に追加
「うっ……わあぁぁぁぁぁ!?」
慌てて振り払って振り返る。
そこには驚いた顔をした男の子がいた。
「熊ちゃん?」
目をパチパチさせている男の子に対して臨戦態勢の私。
いきなり私に抱き着くなんて、コイツ何!?
そう思ってからハッとした。
違う。
私は今『莉央』なんだ。
男の子に背を向けてメモに目を通す。
コイツは……あった。
『僕の事を熊ちゃんって呼ぶのは同じ班の如月 勇気(きさらぎ ゆうき)くん。僕は勇気くんって呼んでるよ』
私はメモをポケットに入れて如月勇気を振り向いた。
「お……はよう……。勇気くん……」
ぎこちなく笑うと如月勇気は目をパチパチさせてからニコッと人懐こい笑顔を向けた。
「おはよう、熊ちゃん。いつもの事なのに今日はやたらと驚いてたね?どうして?」
ドキッとして目を逸らす。
如月勇気はニコニコしながら私との間を詰めてきた。
「ちょ、ちょっと昨日怖い映画観ちゃって……」
「ふーん。熊ちゃんそういうの苦手って言ってたのに?」
「うっ……。ふ……双子のお姉ちゃんが観たいって言ってたから……」
如月勇気はただニコニコしているだけ。
疑ってはいない……?
ぎこちない笑みのまま歩き出す私。
大丈夫。
落ち着け、莉愛。
今日だけ頑張ればいいんだから。
莉央の仕草を真似てればいいんだから。
如月勇気と一緒に教室である調理場にたどり着く。
とりあえず私は如月勇気が座ったその隣に座った。
コイツが何も言ってこないって事は、ここで合ってるんだよね……?
如月勇気のくだらない話を聞き流しながらただ笑顔を浮かべる。
すると私の隣に男の子が1人座った。
ドキッとして男の子を見上げる。
.
最初のコメントを投稿しよう!