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最初に見たのは一昨日の夜のことだった。
大学での講義を終え、バスを使い自分の住んでいるアパートの近くのバス停で降りた。
とぼとぼ、と。少ない街灯が照らすだけの薄暗い路地。
壮介は薄暗い街灯で平凡なその身を照らしながらアパートへ向かって歩いていた。
その薄暗い路地でだった。さらに暗い横道をふと見てしまった。なんの気なしに、ふと。
いたのだ。少女が。黒いシャツを羽織り、黒い長ズボンを穿いた、黒い少女が。
歩いているわけでもなく。スマートフォンをいじっているわけでもなく。
ただ何をするわけでもなく立ち尽くしている。
顔の右半分をセミロングの黒髪で覆い、残った左目でただ壮介を見ていた。
大学進学に際して、この辺に移り住んで一年とちょっと。とうとう変な奴と遭遇してしまったか、とその時は思った。
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