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それから金曜日の夜になっていた。
理香がお風呂から戻ってきたとき、由紀から電話があった。由紀はその日、学校から帰ってきてはいなかった。
緊急だった。慌てて駆けつける。
教えられた救急病院へ行った。
言われた通り、保険証、パジャマ、着替えを持ってきた。
由紀は産婦人科に入院していた。流産だったらしい。
「ごめんね、急にこんなことで呼んで。ルームメイトの有沢さんしか、頼める人がいなかったの」
「いいよ。もっと早く気づいてあげればよかった。本当にごめん」
「赤ちゃん、ダメだった。でも、処分するつもりでいたの。彼にも内緒でね」
「なんで?どうしてそんなに一人で全部抱え込むの?」
涙が出そうになる。
もうすぐ、由紀の両親も来るという。内緒にしたくても未成年だった。学校に連絡するか、親に連絡するかの選択だったそうだ。
理香もはっと気づく。
もうすぐ、門限時間になる。理香もだが、由紀も外泊届けを出していなかった。
こういう時に先生という立場を利用させてもらうのは、心苦しいが、仕方がない。もし、由紀のことが学校にばれたら大変なことになる。
すぐに三原に電話した。寮にいるはずだった。
「先生、ごめん。由紀さんが・・・・・。今病院にいる。学校には知られたくないの」
三原は、二人の外泊届けを出して、消灯になったら来てくれると言った。
とりあえず、安心する。
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