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【Side 102 Room.】
千葉県市川市にある『麻布・ニューパレス』
俺がここに引っ越してきて大体半年くらいが経とうとしていた。
あー、今思い出すのも悍ましい話だ……
前に暮らしていた都内のマンションで、俺は名も顔も知らぬ悪質なストーカーからの被害に合い、逃げるようにこうして都外のアパートまで引っ越してきたのである。
1DKの少しばかり狭い部屋ではあるが、1人暮らしならばこの広さでも十分だ。コンビニまで徒歩5分。最寄りの駅までは少し距離があるが高架下を通っていけば雨の日も傘をさすことなく辿り着くことができる。駅前には格安のディスカウントストア「ABS卸売りセンター」もあり、立地にもとても満足をしていた。
1点、不満をあげるとするならば千葉県の市川市にあるのにも関らずアパートの名前が『麻布・ニューパレス』であるということだろう……何故こんな名前なのかは知らないがこれはかなり痛い。何たってここは千葉の市川市。『麻布』など縁も所縁も無い場所なのだ。そしてアパートの外装からしても『ニューパレス』と名付けられる程の立派なものではない。築30年は過ぎているボロアパートである。あー、これは誰がどう見ても名前負けをしていると笑うところだろう。
さて、こんな痛い名称のボロアパートであるが、俺の隣の部屋には、同じ年齢の女性が一人で暮らしていた。
容姿に目立った印象はないが、真面目で礼節のある女性だと感じている。一緒のアパートに暮らし始めて約半年間、大きなトラブルもなくごく平穏な生活をしてはいるが……実はここ最近少し気になることがあるのだ。
勘違いかもしれない。
でも、俺の隣の部屋に住むその女性の視線が何かと俺に向けられているような気がするのだ。
あー、こんな事を言ってしまったら自意識過剰な気持ち悪い野郎だと思われるかもしれない。
しかし、前のマンションであの悍ましいストーカー被害を経験した俺にとって、あの得も知れぬ視線は畏怖すべきものなのだ。
そんなある日のこと。
休日、俺が某携帯小説投稿サイトで新作の恋愛作品をアップしている最中に玄関から来訪者を告げるチャイムの音がなったのだ――
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