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【Side 101 Room.】
その後、私とお隣の部屋の男性は、番組のスタッフの方から改めて丁寧な企画説明を受けました。
番組の企画は「突撃バラエティ隣人クイズ」というもので、昨今、特に都心部などで問題となっている隣人への無関心。その社会問題に一石を投じる為のクイズ企画とのことでした。
確かに隣人さんやご近所さんとの交流などはすっかりと薄れてしまっている世の中です。隣人さんがある日突然、部屋の中で倒れて死を迎えていたとしても、そのことに気が付かずに生活を送ってしまう方々が多くいると聞きます。
私たちは番組スタッフさんからの熱心な説得の末に「住所は晒さない」「顔は出さない」「声も変える」「先程の本名にはピー音を入れてこれからは仮名で受け答えする」などのプライバシーを守ることを条件に番組出演を渋々と承諾したのでした。
クイズの賞金100万円は魅力的でしたが、私は端から賞金などを狙う気などは御座いませんでした。寧ろ早々とクイズに不正解をして部屋へと帰りたいと思っていたのです。
そもそもお隣さんに関するクイズになんて正解できるわけがないのです。いくら隣に暮らしているといっても私たちは他人同士。お互いのことなどは全く何も知らないのですから……
とりあえず私はテレビのスタッフさんに仮名をお伝えます。ここは適当に私が頻繁に利用している某携帯小説投稿サイトで使っているユーザーネームあたりで良いでしょう。
あれ? ……えっ?
何でしょうか、今の、視線は……
過去に酷いストーカー被害を経験したことのある私は他者から浴びせられる『探るような視線』に対して、過剰に反応してしまう癖がございます。
その視線の先にはお隣の部屋に住む男性の姿……
ああ、どうして、私に向かってそんな視線を?
やめて、やめてください。
怖い。そのこちらを探るような視線に……
私はとても恐怖を感じるのです――
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