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【Side 102 Room.】
俺は慌てて隣の部屋の女性から視線を逸らした。あー、もしかしたら不快な思いをさせてしまっただろうか?
思わず女性に視線を向けてしまった理由。それは彼女が今し方、口にした仮名が俺が毎日利用している某携帯小説投稿サイトで頻繁にコミュニケーションをとっている熱心なファンの方と同じ名前だったからだ。
暫し物思いに耽る俺に「タカシさんは何とお呼びすればいいですか?」と番組スタッフから声がかかる。そうだ、俺も仮名を考えなければならない……とはいってもすぐに思いつく名前もなく。俺はその某携帯小説投稿サイトにて使用しているペンネームを答えたのである。
ん? ……何だ?
このこちらを見る、視線は……
過去に酷いストーカー被害を経験したことのある俺は他者から浴びせられる『探るような視線』に対して、過剰に反応してしまう癖がある。
視線の元を辿るとその先には隣の部屋に住む女性の姿……
何だ? なぜ、俺にそんな視線を投げる?
今すぐにやめてもらいたい。
背筋に嫌な汗が流れ落ちる。
そのこちらを探るような視線に……
俺は得も知れぬ恐怖を感じるのだ――
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