疑心暗鬼 (略して、ギシアン///)

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【Side 102 Room.】  正解した。とはいえこれは偶然。俺は隣の部屋の女性の誕生日を知っていたわけではない。そう、思い出したのだ。  うちのボロアパートの壁は薄く隣の部屋の物音が響き安い。意識しなくても生活音が耳に入ってきてしまうのである。特に先週の日曜日の事は記憶に残っていた。いつもは物静かな隣の部屋から複数人の女性の騒ぐ声が聞こえたのだ。  乾いたクラッカーの音や、賑やかな拍手の音。極めつけに「ハッピバースデー・トゥ・ユー」等といった歌声が聞こえてくれば誰だってそこで誕生日会が行われているのだと想像できるであろう。問題はその誕生日会が隣の女性本人を祝うものであるかどうかであったが……それは試しに答えてみて、駄目で元々、当たればラッキーという考えであった。  あー、しかしながら次の第2問目を正解することはないだろう。今度は隣の部屋に住む女性が回答者となり俺に関するクイズを答えるのだ。問題の内容は「俺の隠れた趣味は何か?」といったもの。  クイズ番組を盛り上げる為に女性の司会者が「やーん、これはぁ、ラッキー問題ですよぉー」と笑顔で叫んでいるが、バカバカしいにも程がある。他人同然である隣の住人の隠れた趣味などを把握している人間が一体この世に何人いるというのだ?  余程親しい間柄でない限り分かるわけがない。  俺はフリップボードに正解を記す。隠れた趣味といっても恥ずかしいものではない。俺の趣味はサイクリング。しかも、行動時間は皆の寝静まった深夜から明け方にかけて、誰もいない河川敷を音楽を聴きながら思いっきり走るのが好きなのだ。そんな事を隣の部屋の女性は知る由もないだろう。  無駄に長いシンキングタイムが終了。「それでは同時にフリップをお上げくださぁーい!」といった合図と共に俺は回答の記されたフリップをカメラの前に掲げる。  さあ、これで終わりかな……  そう思ったのも束の間、現場から「うおおーっ!」っと大きな歓声が上がる。 「これは驚き! なんと大正解ですっ!!」  男性司会者の大きな声と共に「ピンポン、ピンポーン」と正解を祝す軽快なSEが鳴り響く。  ……はっ、嘘だろ!?  何故! なんで!?  隣の部屋に住む女性の姿はパーテーションで区切られており、この席からは確認できない。  ああ、悍ましい、悍ましい、悍ましい……  ドウシテ、キミガ、シッテイルンダ――?
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