第1章

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 部屋で仮眠をとっていると、トラックが走り去っていく音が聞こえた。引越し作業が終わったようだ。  明日は事務所に所属できるかどうかのオーディションがある。僕にとってはデビューを掴む最後のチャンスになる。まずは基礎になる発声の練習をするためにベランダへ移動、多分近所迷惑になるのでは?・・・と思うかもしれないが、このアパートの裏手は山になっており、下の階の住人はまだ住んでいないので、多少は大丈夫なのだ。    ただこの時、隣に越してきた住人のことをすっかり忘れてしまっていた。  「・・・・東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って、ういろうはいらっしゃりませぬか。・・ふう、噛んでしまったなぁ。」  前半は順調に読めるのだが、後半は似たような読みなど引っ掛け部分があり焦ってしまう傾向があり噛んでしまう。  パチパチパチ・・・。  隣から拍手が聞こえたので、不思議になり振り向いた。  すると隣のベランダに一人の女性が立っていた。 まずい!そういえば、隣に誰か引っ越してきていたことを失念していた。
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