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恥ずかしくなり、その場で会釈しすばやく部屋に戻ろうとしたとき、「ちょっと待って。」と声を掛けられた。僕は怒られるのかなとビクビクしながら女性に向き直ることにした。
「そんなに脅えないでよ。拍手したじゃない?怒ったりしないよ。」
結構やさしい感じの女性だった。
「拍手ありがとうございます。ただ、えーと恥ずかしいですね、聴かれていただなんて。」
僕は、本当に恥ずかしかったため俯いたまま答えた。
「君は俳優志望者?もしかして声優とかかなぁ。そういった世界目指してる人じゃなきゃ、「外郎売り」知ってるはずないもんね。」
笑いながら喋りかけてくるその女性は、もしかしたら女優さんの卵とかなのだろうか?それはそれで、自分の発声についてやや駄目だしをくらいそうだな。
「はい。声優になるために養成所に通っています。・・・あのどうだったでしょうか?」
じつはアドバイスが欲しかったこともあり、役者の経験者っぽいので尋ねてみた。
その女性は、う~ん?と唸り考えた後、もう一度「外郎売り」を読んで欲しいと言って来た。緊張はしたが、明日のオーディションのためと思い精一杯読んだ。しかし、さっきと同じ場所で噛んでしまった。はずかしい。
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