第3章 「 ファイナル・ステージへ 」

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ドラムが激しく鳴り響いた。 死神キラーズバンドの音楽が、メンバーの鼓動を一挙に MAXにした。 舞台の上で、7人のメンバーが大きな声で歓声をあげた。 観客はその迫力に、目を見開いた。 そこにいるのは、ロックのナンバーを踊る ロッカーのように見えたのだ。 黒く光るレザーの衣装は、L高校とは対照的で、それでいて 刺激的に見えた。 納屋実達は、昨日のリハーサルを思い出していた。 ダンダンダンダンダンダンダン!!! ズダダダダダダダダダダダダダ ドムドムドムドム!!! メンバーが激しくジャンプして、納屋実もまたその音に興奮した。 ダン!! ジャンプしてポーズをキメる、それもそれぞれでかっこよく。 中央の納屋実だけが、後ろを向いて足を開いて立っている。 すっ・・・ そこからちょっと頭をかしげて振り向く納屋実。 キラのシャウトに、メンバーはぐるんと上半身を回す。 片腕を、真上に上げて、ストンッと落とし、それに合わせて 足先がクロスする。 納屋実がメンバーの前をひとりずつこのステップで通ると メンバーも同じステップとアクションで、ついてくる。 決まったひとつの場所で回転して、足を高く蹴るような動きで 舞台上にメンバーが広がった。 そしてそこから音楽は、キーボードがメインのメロディアスな ロックバラードに変化した。 全員で柔らかくしなやかな動きになり、細かなリズムに メンバーがするすると浮遊するように回転してゆく。 最後は再びキラの歌と、繰り返されるメロディー。 メンバーは全員で同じ腕の振り付けを背中合わせの円陣で 踊った。 繰り返される手の動きで、細い指先の爪が光る。 メロディーに合わせたダンスは、まるで楽器を演奏している ようで、その美しさは、大きな感動を呼んだ。 「Love me tender, Love me sweet, Never let me go」 キラの歌は、最後にゆっくりと歌詞だけを繰り返して終わった。 納屋実達は曲に合わせてゆっくりと舞台の奥へ歩いていき それぞれ違うポーズで、止まった。 それは、街角で女子のバンドメンバーが解散する時の風景に 似ていた。
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