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「ドサッ」という重たい音が、四つ。
リューがメガホンを切ると同時に、ステージ端のギンジとサスケが何かをステージ上に置いた。
人間一人余裕で入れるような、大きな麻袋、四つ。
歓声が上がった。
この麻袋は、挑戦者となる敵チームを叩き潰した上でさらに大口を叩いたことに対するジェイ・グライダーズなりの贖罪の習慣でもある。
その麻袋だけを残し、僕達はステージを降りた。
心中だけならば映画賞でも受賞したタレントがレッドカーペットを歩くような気分だが。
僕達は張りぼての階段を降り、薄汚れたアスファルトの上を歩く。
リューを先頭に、リオとサスケはヘラヘラと歓声に応えながら、ギンジと僕は少し気まずそうにしながら。
観衆の中を抜けた。
向かうのは、控室代わりに貸された廃ビル。
このバスケットボールコートから広い道路を15分ほど歩いた場所。
道路を歩くのにはのに左右確認すら必要ない。
かつては国道だったこの太い道路に、車なんて物は一台も走っていない。
ヒビ割れから雑草の生い茂ったアスファルトを10足の靴が踏みしめる。
ビルへ。
五階建ての決して大きくないビル。
このビルもまた、世界の死と同時に死を迎えた。
廃ビルと表現したが事実上のこと。
四年前までは職場の活気に溢れていたであろうこのビルも、今や周辺住人のセーフハウスでしかない。
照明は稼働しているが薄暗くて気味が悪い。
控室に向かう廊下には、防寒の毛布や、非常食の殻などが散乱している。
おそらく四年前に付いて乾いたのであろう、壁に付着する赤黒い大きなシミを、僕は見なかったことにした。
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