Prologue -1-

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歓声をも掻き消すような咆哮を放ったのは、キーパーのリュー。 少し伸び気味の前髪の間から覗く鋭い眼差しと、広い背中に印字された「1」の背番号。 彼はこのチーム最後の砦を担う男であり、同時にリーダーを務める司令塔でもある。 「あははっ! リューさんがいれば安心して空けれるやないっすか!」 「黙れサスケ。ギンジ、テメェもだ。妹を見習ってさっさと攻守を切り替えろ」 「チッ、リオとオレは関係ないだろ……」 右ディフェンダーを担うサスケは、いつものようにヘラヘラと笑いながらトレードマークのゴーグルメガネを押し上げる。 向かいのギンジもだ。 異様なほどまでに存在感を放つ大柄な身体を持つ彼は、溜息を吐きながら左方の壁際までポジションを広げた。 「……カイト、ねぇってば」 「うん?」 「大丈夫? どっか痛めた?」 「ううん、どこも。ごめんよ、リオ」 「なんで謝んのよ。大丈夫ならさっさと立って」 僕はリオの差し出した手を掴み、一思いに起き上がってトレードマークのキャップを被り直す。 ニッと歯を見せて笑うリオの長いポニーテールが、会場に吹き込む夜風にフワリと舞った。  
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