45人が本棚に入れています
本棚に追加
例えるなら、自分を閉じ込めた箱が展開されるように。
僕の視界には、僕自身が作り出したパースが広がってゆく。
敵ディフェンダーとの位置関係。
フェンスとの距離。
リオのいる位置との角度。
そして床、壁の材質と、ボールの大きさ、柔らかさを掛け合わせて弾き出した物理運動のシミュレーション。
あとは、コンマ1秒先に描く自分の理想的な動きを、ただなぞるだけの作業。
眼前の敵の目の前。
僕はボールの真上に靴底を押し付けてボールを止めた。
そして間を置かず、足を引いてボールをインステップに乗せる。
敵を交わすのは左右、どちらでもない。
上。
ふわりと放り投げたボールは敵の頭上を越える。
敵の視線が上に向いた瞬間、右前にステップを踏んで前に出る。
宙から地へ落ちるボール。
先程リューのボールを捌いた時のように、ストリートサッカーではボールの慣性をいかに殺さぬかがカギだ。
「リオ! 決めてやれ!!」
「オーケー、カイトッ!!」
トラップなんてシケた真似はしない。
ボールが地に着く前に、僕はダイレクトで左サイドへとクロスパスを蹴り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!