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これはバカにしているとかではなくて、素直に思ったこと。
初めてリオの見せるプレーを目にした時、まるで猿のようだと思った。
それはあの時も今も全く変わっていない。
僕が打ち上げたボールは少し高すぎたような気もしたが、一瞬見えた彼女の顔は嫌顔など一切の含みも持っていなかった。
むしろリオは、悪戯じみた子供のような笑みを浮かべていた。
繰り返すようだが僕たちの興ずるこのスポーツは、サッカーでも、フットサルでもない。
ストリートサッカー。
サッカーとそれとの違いを教えてくれたのもまた、彼女だった。
高いボール。
女性にしてはわりと背は高めだが、それでも小柄なリオはただ跳び上がっても届かない。
ならば。
彼女が跳び付いたのは、またもフェンス。
シューズの先端をフェンスの隙間にひっかけ、再度身体のバネを働かせる。
さらなる高さ……いや、高みへ。
僕の頭をも超えるような高さまで飛び上がりながら、リオはそのしなやかな身体を力一杯捻り込む。
鳥肌が立つほどに。
リオの全体重が、いや、物理学をも無視してそれ以上の力学が働いたそのボレーキックが、ボールの芯の芯の芯を捕らえた。
ボールは、回転することすら忘れたらしい。
無回転のまま、吸い込まれる。
ゴールネット、いや。
ドラマチックな演出など生まれるわけもない、積み上げたダンボールで作られた、まるでゴミ置場のようなゴールの中へと―――。
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