Prologue -1-

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これはバカにしているとかではなくて、素直に思ったこと。 初めてリオの見せるプレーを目にした時、まるで猿のようだと思った。 それはあの時も今も全く変わっていない。 僕が打ち上げたボールは少し高すぎたような気もしたが、一瞬見えた彼女の顔は嫌顔など一切の含みも持っていなかった。 むしろリオは、悪戯じみた子供のような笑みを浮かべていた。 繰り返すようだが僕たちの興ずるこのスポーツは、サッカーでも、フットサルでもない。 ストリートサッカー。 サッカーとそれとの違いを教えてくれたのもまた、彼女だった。 高いボール。 女性にしてはわりと背は高めだが、それでも小柄なリオはただ跳び上がっても届かない。 ならば。 彼女が跳び付いたのは、またもフェンス。 シューズの先端をフェンスの隙間にひっかけ、再度身体のバネを働かせる。 さらなる高さ……いや、高みへ。 僕の頭をも超えるような高さまで飛び上がりながら、リオはそのしなやかな身体を力一杯捻り込む。 鳥肌が立つほどに。 リオの全体重が、いや、物理学をも無視してそれ以上の力学が働いたそのボレーキックが、ボールの芯の芯の芯を捕らえた。 ボールは、回転することすら忘れたらしい。 無回転のまま、吸い込まれる。 ゴールネット、いや。 ドラマチックな演出など生まれるわけもない、積み上げたダンボールで作られた、まるでゴミ置場のようなゴールの中へと―――。  
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