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―――すでに、この光景も見慣れた。
僕達五人はオーディエンスを見下ろす掘っ建てのステージに立っていて、中央に立つリューがメガホンを握っている。
もしも僕の記憶が正しければ、これで126連勝。
さらに言えば、無敗。
「絶対に負けない」を宣伝文句に全国行脚を敢行中の僕達は、この地でもまた勝利を収めた。
延長戦のサドンデスまで持ち込んだが、それすらも演出のように思えてくる。
僕達……ジェイ・グライダーズが勝つことは、もはや、常識だった。
《仙台の皆さん、ありがとうございます。こんばんは、ジェイ・グライダーズのキャプテン、リュー・アカギです》
試合中とはかけ離れた、リューの落ち着いた声。
これもまた聞き慣れている。
そしてこの声音が、少しずつ変化してゆくことも知っている。
《まずはお相手していただいた相手チームの皆様に敬意を示します。我々をあわやというところまで追い詰めることができたチームは片手で数えられるほどしかありません。……しかし、もしも彼らの敗因と、我々ジェイ・グライダーズの勝因を挙げるとしたならば》
小さく息を吸い込むリュー。
会場はしばしの静寂に包まれた。
《……俺たちが、あまりにも強かったってことだ》
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