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大公国と共和国に挟まれた小さいながらも、日夜冒険者で賑わう街「デピエド」にその店はある。
「ティル・ナ・ノーカ」は、ティル=甘藍(かんらん)(♀)によって経営されている、野菜・果物専門の八百屋のような店だ。
近くには料理ギルドと呼ばれるレストランがあり、明日のシェフを夢見る地方からの来訪者や冒険者で日々賑わっている。
甘藍は、料理ギルドに各地で仕入れた野菜や果物を卸し、自分で貴重な野菜や果物を栽培する事で生計を立てている。
ヒューマンだけでなく、猫から進化したヌコ・龍の血筋を持つドラコ・天使の生まれ変わりのエンジェル・小さいながらも知性のあるコビット・容姿端麗なアクアドールなど様々な種族と、地元民と冒険者で成り立つこの世界は「Epic(神話)」に挑戦すべく時が流れている。
甘藍は、そんな中で商売魂逞(たくま)しく野菜を仕入れて売るという、農家と商売人の間で奮闘している。
小さいながらも住みやすいこの街で、一日を仕入れと栽培に充てると夜になってしまう。
彼女はこの街の元気印として密かな人気を集めていたりするのだ。
野菜ソムリエの資格を取って、同じ野菜でも種類の違いによりどの料理に向いているかなど適切なアドバイスをしているのも、冒険者に一目置かれている要因でもある。
「春系キャベツは柔らかいから、シャキシャキ感を求めるなら、冬系キャベツがオススメだね!」と今日も甘藍の威勢の良い、元気な声がギルドにこだまする。
「んな事は、普通分からんよ」横から口を出すのは、甘藍の使い魔でありペットの「すいか・♂」である。すいかは、甘藍のパートナーとして、時には甘藍のストッパー、時には経営アドバイザー、時には猫の姿に戻り、看板猫として甘藍を補佐しているのだ。
「ミズウルテイン」という水専門店で歳も近い、テイン=水樹(♀)とは大の仲良しで、店は放れているが毎日仕事の愚痴などの話や、近隣国王陛下の話で盛り上がっている。
アクアドール族の美形陛下の話で最近は持ちきりだったりする、年頃だ…
「花の村雲」という花屋でお姉さんの、村雲=香織(♀)には色々教えて貰っていたりするのだ。
ベテラン冒険者でエンジェル族のコタルディ=深雪や、新米冒険者でクマのレディル=千夏などに助けられつつ、ティル・ナ・ノーカのさらなる発展を目指している。
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