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「痛っ……」
脳内を、
貫くような痛みが走る。
少女は足を止め、
痛みが去るのをしばらく待った。
うつむいたまま、
視線を上げる。
延々と続く灰色の廊下。
天井際の赤色灯が非常事態のサイレンと呼応し、
赤い光を巡らせている。
壁には幾筋も亀裂が走っている。
床は、
表面のリノリウムが割れて大きく捲(めく)れ上がっている。
度重なる衝撃に建物全体が歪(ひず)んでいるのだった。
少女は双頭の獸と格闘した部屋を出たのち、
ずっと歩き続けていた。
廊下は行けども行けども無機質な風景の繰り返しで、
まるで同じところをぐるぐる廻っているように思えた。
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