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少女は獸の血溜まりの真ん中に立ち、
仮のデバイスを収め、
目を閉じて呼吸を整えていた。
すると、
――愛ちゃん。
頭の中で誰かに呼ばれたような気がした。
それはいかにも優しげな若い女性の声で、
どこか懐かしい、
心地よい響きだった。
――誰……だっけ。
思いを巡らす。
すると再び頭痛が差し込む。
結局、
声の主を思い出すことはできなかった。
しかし、
曖昧な記憶の中から、
一つだけ、
確信的な情報を掴みとることができた。
――愛。
岡崎愛。
それ、
アタシの名前だ。
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