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愛は下階に降りた。
階段の踊り場からフロアへ向かう。
獸を警戒しつつ、
壁越し進み、
曲がり角を折れる。
そこで愛は、
思わず目を覆った。
二〇メートル四方の部屋に、
ざっと見て二〇体ほどの屍が折り重なって転がっていた。
亡骸はいずれも無惨な有様で、
床はさながら血の海と化していた。
末期に焼き付いた顔の表情から、
怯えたまま獸の牙にかかった様子が窺える。
死者は概(おおむ)ね研究者の様で、
誰もかれも白衣を朱に染めていた。
血煙が壁を越え、
天井にまで飛び散っていた。
――この先に、
何か凄いのがいる。
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