プロローグ ~未来の記憶~

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 足先から頭まで一五〇センチほど。 全身黒毛で覆われている。 ケルベロスの如き二つの頭は、 いずれも灰色の脳を露出させている。 口から犬歯が覗き、 舌は垂れ下がるまま。 唾液が滴り落ちている。 煌々と光る眼は、 狂気に満ちて少女を見据えている。  獸の唸り声が低く響く。 (ついにあの力を使うことになるのね・・・)  少女は親指で掌を切りつけると、 血を流す掌を握りこみ、 そこに自分自身が持ち合せている電流を込めた。 その手に、 音もなく仮のデバイスが立ちあがる。 巨大な中世ヨーロッパの時代に使われていた剣。 ブロードソードのようにまっすぐでそれよりも少しだけ広幅の刃は、 黒曜石の様に暗光を湛えていた。
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