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また涙が出てきて、それを見られないように一哉くんの胸の辺りのベッドに顔を埋めた。
一哉くんは私の頭をゆっくり撫でた。
「ごめんな…心配かけて」
私は頭を振った。
もう目覚めてくれただけで充分だった。
「あれ、なんか編んでるの?」
私の髪の毛をゆっくり愛しむように撫でながら、一哉くんが不思議そうに枕元のサイドテーブルに目をやった。
私は涙をぬぐうと、そっと一哉くんの手をお腹に当てた。
「え」
膨らみがかすかに目立つお腹に、一哉くんが一瞬ぎょっとした。
「まさか…」
「一哉くんの子だよ」
「マジか…!」
さっきと同じ言葉を繰り返すと、一哉くんは私を引き寄せてそのお腹をまじまじと見てからおそるおそる耳をあてた。
「あはは、まだ胎動はしてないってば。一哉くん、パパになるんだよ」
「オレ…」
今度は一哉くんが顔を歪ませて泣きそうになる。痩せて少し凄惨さを増しているものの、その美しさは健在だ。
「おめでとう、一哉くん、本当に、私たち家族になるんだよ」
「うん…、うん、おめでとう…涼…!!」
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