歯がゆい現実の迫間で

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「今度さ、エドが手がけてるアーティストのホームパーティーがあるんだってさ。誘われた」 「ふうん、エドってたくさんアーティスト抱えてそうだけど…どんな人来るんだろ?」 「さあ。涼と2人で参加するって言っておいた」 「え、うん。いつ頃?」 「再来週っつってた。いーよね?」 「う、うん、いいよ」  再来週。  その頃には、もうアメリカにいないかもしれない。  そう思いながらも、楽しそうな一哉くんに頷き返す。 「じゃオレ、涼のこと、フィアンセだって自慢しよー」 「ええっ」 「トーゼン」 「そうだけど…」  2人で住むアパートに帰って来たのは、もう夜の9時を過ぎていた。途中で寄ったマーケットの荷物をキッチンに置く。  ラウンジから出てきた一哉くんが上機嫌だったのは、お酒も飲めて、ホームパーティーでの話があったかららしい。  キッチンで片づけている私をリビングのソファで、一哉くんは嬉しそうに眺めている。  幸せそうに、楽しそうに。  そんな表情がたまらなく愛しく、切なかった。 「皆、羨むだろーなー」  ご満悦気味な一哉くんは、軽やかに私の方に近づいてきて、うなじ辺りの髪をかきあげる。  そのまま甘えるように耳の後ろに鼻を押しつけ、そのままいざるように私のうなじから肩口にかけて唇を滑らせる。  予想以上の熱でその気だと訴えるように強く吸われて、慌てる。 「ま、待って。片づけ…」 「待たない」  何度となくキスが降り、呼吸が震えた。  するりとしなやかな腕が腰に回り、扇情的に指先が腰のあたりを愛撫する。くすぐったくて少し身をよじる。 「一哉くん、私、シャワー浴びたい…」 「後でいーじゃん…」  背中で服の上からブラのホックが外される。そのまま一哉くんの手のひらは、トップスの下から滑り込んで、わき腹をなぞって胸の膨らみを包んだ。 「だ、だめ」 「なんで?」  拒否する私の反応すら刺激に変えて、一哉くんはまるで野生の肉食獣のように目を細めて愉しんでいる。 「いろいろやらなきゃ、んっ」  一哉くんの指先が私の身体を焦らして、どんどん子宮の底から熱が身体をひたひたと毒していく。
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