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深く黒く、色っぽい目が潤んで私の胸を締め付ける。
あの泥酔して出会ったライブハウスの時から変わらない、私を虜にした瞳。
ずっとこの目が曇らないように、そばにいたい。
ただそばにいて、そうして、この先のあらゆる時間をともに手を携えていけたら。
殲滅ロザリオの音楽とともに、そしてこの子とともに、ずっとずっと。
元気に動く赤ちゃんの胎動を全身に感じながら、立ち上がった一哉くんは、また私の唇に唇を重ねる。
「もう行かないと」
「分かってる。涼と赤ちゃんからエネルギーもらってから」
「ふふ、じゃあいっぱいあげる。行ってらっしゃい」
私は目を閉じて、一哉くんの唇に改めてキスを贈った。
「お守り」
「サンキュ、行ってくる」
ステージが待ってる。
新しい、一哉くんのステージ。そして私のステージ。
一哉くんは、大きく頷くと私から離れて、大歓声が迎えるステージへと身を翻した。もう野性味と色気のあるトーイの顔になっている。
トーイがステージに姿を見せた瞬間、アリーナ全体に怒号のような歓声があがった。 トーイの帰りを、復帰を待っていた女性の悲鳴も男性のコールも、すべてを一身に受けて、一哉くんは中央のスタンドマイクに立つ。
始まる。
今度こそ、復活を遂げたトーイの、殲滅ロザリオの新しい章が。
そして、新しい世界が、私と一哉くんと、そしてこの子を待ってる。
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