歯がゆい現実の迫間で

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 司さんの冷静な言葉に、自分の気持ちが鎮まっていく。 「…ごめん、一哉くん。少し…余裕なくて」  素直に謝ると、一哉くんがイスから身を起こして私の腕をとる。 「司、涼の体調、あまり良くないみたいなんだ。アパートまで送ってきたいんだけど」 「一哉くん! いいから!」  一哉くんの申し出を思わず突っぱねて、慌てて頭を振る。 「違う…。大丈夫、ちょっと疲れてるだけだから…ごめん」 「…涼? なんか様子おかしくね? …何かあった?」 「…アメリカ暮らしも1ヶ月ですからね、そろそろ疲れも出てくるでしょう、早めにあがりますか?」 「いえ、大丈夫です。丹野さんがいない分、ここでの責任は私なので…」  丹野さんの一時帰国の間の責任すらまともに果たせないのでは、よけいにエドに言われたことが重く感じる。  なんでもない風を装い、一哉くんの腕をそっと外して、一哉くんを見上げる。 「ごめんね、疲れがたまっているのは皆も同じだから。さ、仕事に戻るね。書類仕事残ってるから、下のラウンジでエドたちに混ざってきたら?」 「…」  私の言葉に、一哉くんは納得しきれない表情のまま、渋々私から離れる。 「帰る時声かけて。一人で帰んなよ」 「分かった。じゃまたね」  司さんに頭を下げて、コントロールルームを出る。  気持ちがざわついている。それをなだめるようにドアに寄りかかり、息をついた。  書類はプロダクションルームに置いてある。しばらくそこで仕事に集中すれば、落ち着くはずだ。  そう思いながらも、エドの言葉がそうとう応えているのが分かる。せめて今日のスケジュールが終わってから言ってくれればいいものを。  エドが恨めしい。
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