第1章 賽は投げられた

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「Slam02,Order Vector 250,Climb Angels 20, Contact Channel 1, Read back.(スラム02、方位250度、20,000フィートまで上昇、チャンネル1でレーダサイトとコンタクトする)」 遅れて単座型の2号機のパイロットの韓(ハン)が指令を復唱した。  2機は誘導員の指示に従い滑走路に誘導された。 「Slam01,Take off(スラム01、離陸する)」  1号機がスロットルをかけて離陸する。続いて2号機も離陸を開始した。  離陸した2機はF15Kの持つ音速を2倍も超えるF110-STW-129エンジンによって数分もかからずに現場空域に達しようとしていた。 「…韓(ハン)少佐、また連邦機でしょうか?最近やたら多いですね。」 「奴(やっこ)さん結構羽振りいいって聞くしな。それにしても最近はマズイ情報もあるらしい。」  やや不安そうな申(シン)中尉が現場空域まで余裕があったため質問し、それ対して韓少佐は答えた。  4年前の2019年、中華人民共和国は突如、朝鮮民主主義人民共和国、マクマホンライン(中国とインドの係争地)、南沙諸島に同時侵攻し1ヶ月足らずで占領。  北朝鮮軍の大半は事前の工作により懐柔させられており、ほとんど抵抗なく人民解放軍は侵入占領。金(キム)正恩(ジョンウン)総書記は逮捕処刑された。  マクマホンラインではインド軍を数と質の両面で打ち負かし占領。  南沙諸島は人民解放海軍の空母配備新型艦載機J23、最新鋭高性能駆逐艦群によりベトナム・フィリピン・ブルネイの連合軍は破れ堂々と占領した。  アメリカを中心とした国々が侵略行為を非難したが中国政府は無視。実効支配を強め国連総会・安保理で今回の件について正当性を発表し過半数の国に受け入れられた。経済力に物を言わせた中国に誰も大きく反発できなかったのだ。    翌年2020年には国名を中華連邦と改名し、法律を強化し共産党による一党独裁制を揺るぎないものにした。  そして2023年の今年、連邦と大韓民国国境上空や台湾海峡、日本の尖閣諸島上空では連邦機による領空侵犯が多発している。
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