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コンビニから憑いてきた女の霊、名前がわからないので
レイコさんとでもしとこうか。
彼女の情報によると、彼女を騙した男は、無類の競馬好きだそうだ。
おそらくレイコさんから巻き上げた金も競馬やギャンブルに消えたのだろう。
だからレイコさんはずっと競馬場で張っていたけど、まだ出会えないというのだ。
「他の土地に行ってるかもしれへんなあ。」
疫病神が言った。
情報はだいたいわかったけど、肝心の顔がわからないので、
レイコさんに、僕のデジカメで念写してもらった。
念写とは思えぬ鮮明な写真が出てきた。
その写真は満面の笑顔だった。
騙されて自殺するほど苦しんだにも関わらず、思い出すのは
こんな顔なんだな。よほど好きだったのだ。
僕はレイコさんが哀れに思えた。
「じゃあ、私がこの写真を元に競馬場で張って見るけえ。
アンタは地元の競馬場、私はよその競馬場で張ってみるよ。」
貧乏神がレイコさんに言った。
「ほな頼むで、ビンちゃん。」
疫病神が言うと、貧乏神は不快な顔をした。
「ビンちゃんって、勝手に変なあだ名つけんでーね。」
「ええやん、そのほうがなんかフレンドリーやろ。」
貧乏神は苦虫を潰したような顔をした。
「わしのことは、ヤックンって呼んでくれてええで。」
「なんで自分だけ、昔のアイドルみたいな名前なんよ。ずるいわ。」
疫病神は、けけけと笑った。
僕と疫病神は、レイコさんから他に立ち寄りそうな場所を聞いて
暇を見つけては、その場所を訪ねてみた。
月日は悪戯に流れ、2ヶ月経っても何の手がかりも得られなかった。
その間レイコさんまで僕の家に待機してるから、夜中にトイレにでも起きようものなら
心臓が止まりそうなほどびっくりする。やっぱ幽霊は慣れないや。
そして、灯台下暗しとはこのこと、意外とあっさりこの街の駅で
レイコさんの元彼を見つけたのだ。
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