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「なあ、最近、坊にわしらの影響、なんも出てへんように思わんか?」
キッチンに立って鼻歌交じりに昼食を作っている遊を見て、
疫病神は貧乏神に耳打ちをしてきた。
「そうじゃねえ。熱も出なくなったし、貧乏と言うほどでもなくなったねえ。
まあ、坊が堅実だってこともあるのだけど。」
貧乏神は答えた。
「わしら、力が弱まったんかな。元々、低級な神やったけど。」
疫病神は首を捻る。
「そんなことはないと思うよ?だって、私ら、ちゃんと結婚詐欺師と苛めの女の子に
災いを起こしたんじゃから。」
貧乏神は、得意気に答えた。
「せやなあ。わしらの影響を、あいつらモロうけてたもんなあ。
という事は、坊に免疫が出来て強くなったとしか思えへんなあ。」
「そうじゃねえ。レイコさんも部屋におるというのに、ぜんぜん平気じゃしね。
以前の坊なら、霊が憑いてるだけで、熱を出して寝込むところよね?」
「となると、わしらもう、坊にとって用済みってことじゃない?
坊は霊にも疫病神にも貧乏神にも影響を受けない強い人間になったんやから。」
神々はしんみりとなってしまった。
遊はガスコンロの火を止め、お皿に豪快に焼きそばを盛り付け、
テーブルに運んで来た。
「なーにしけた顔してんの?まあ、仕方ないか。疫病神と貧乏神だから。
いやあ、君たち、本当に残念だなあ。この名料理人、遊様の手料理を
食べることが出来ないんだから。じゃ、失礼して。いっただきまーす。」
レイコさんは羨ましそうに、遊の周りをウロウロするが
幽霊もご飯は食べることはできないのだ。
神々は寂しいような嬉しいような、なんとも言えない複雑な気持ちになった。
「ねえ、今、神社のイチョウの木と紅葉がめっちゃ綺麗なんだ。
お前らも見に行く?」
遊は、焼きそばを頬張りながら、神々とレイコに話しかけてきた。
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