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「実は会社の人にさあ、このデジカメもらっちゃったんだ。
僕もデジカメ持ってるんだけど、僕のボロいのとは段違い。
新しいもの好きの先輩だから、もう古いのはいらないからって。
これ、試してみたいんだよねー。」
神々は神社ということで、難色を示した。
「あ、そう、じゃ、お前らは留守番。レイコさんは行くでしょ?」
そう誘われたレイコさんはぱあっと笑顔になり、喜んでついていった。
あっさりと置いていかれた神々はちょっと寂しくなり、やはりついて行くことにした。
こんな神社、あったんだ。
そう思うほどにひっそりと小さな神社だった。
しかし、イチョウと紅葉が綺麗なことは勿論、大きな木蓮の木がそこにはあった。
白い花をたくさん咲かせていた。
この時期に木蓮など咲いただろうか?
僕が首を捻っていると、木蓮の木陰から、白装束の巫女さんが出てきた。
はっとするほど、美しい少女に目を奪われた。
嫉妬深いレイコさんは、目ざとくそれに気付くと、美少女の巫女を睨みつけた。
巫女はどんどん近づいてきて、遊には目もくれず、いきなり手のひらを
レイコさんに向け、何事か唱え始めたのだ。
レイコさんは苦悶の表情を浮かべ、苦しみ出した。
僕が驚いていると、レイコさんの姿がどんどん透過して行き
とうとう蒸発するように消えてしまったのだ。
「レイコさんに何をしたんだ!」
僕は巫女に向かって叫んだ。
一瞬巫女はキョトンとした。
巫女は表情一つ変えずに
「あなた、あれが見えていたのね。もちろん、祓ったのよ。」
と答えた。
「いきなり乱暴だろう。レイコさんは君に何もしていない。」
少女は少しだけ驚いた顔をした。
「霊に憑かれれば祓うものでしょう?」
それは、そうだけど。
僕はレイコさんに少し情が移っていたのだ。
「霊にずっと憑かれていても、良いことにはならないわ。」
そう言い捨てると、巫女は神社の奥のほうへ行ってしまった。
僕はもう、この美しい景色どころではなくなってしまった。
意気消沈し、僕が神社の外に出ると、鳥居の外で待っていた。
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