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詠が叫んだ。
その木蓮の木の下の巫女は微笑んだ。
「ありがとう。お母さん。護ってくれたのね。」
「詠!」
後ろで事の次第を見守っていた、神主のオッサンが叫んだ。
「やっと、君に会えた。」
オッサンの目からはとめどなく涙が溢れていた。
オッサンにも見えているんだ。詠のお母さんが。
はかない光の中、微笑む巫女はあっという間に消えてしまった。
「詠という名前はね、母親の名前をそのままつけたんだ。
僕は未練がましい男だ。ずっと詠のことが忘れられなかったから。
子供に同じ名前をつけたんだよ。」
オッサンは涙をぬぐっていつもの人の良さそうな微笑みを浮かべた。
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