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疫病神と貧乏神を追い出した次の日の朝、僕は電車で会社に向かった。
さほど、満員でもない電車の中、入り口の近くに
全身黒尽くめの背の高い痩身の青年が立っていた。
髪の毛は銀髪で、見た目が何となくチャラい。
ホストかな。
僕はそう思いながら、ちらりと男を見た。
男は僕の視線に気付くと硝子球のような目で僕を見て
口元だけで笑った。
僕は慌てて目をそらし、駅についたので
その男の前を通り、ホームに下りた。
その瞬間僕は、背中を何か鋭利なもので切りつけられたような
痛みを感じて、ホームにそのまま倒れてしまった。
周りは騒然となった。
遠くで救急車の音がした。
誰かが僕に常に話しかけてくる。
「大丈夫ですか?気をしっかり持って!今救急車が来るからね!」
見知らぬ誰かの声がだんだん遠ざかる。
僕の意識はブラックアウトした。
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「貧乏神、坊がえらいことになってん。」
疫病神が言う。
「でも私達、坊に捨てられたんですよ?」
貧乏神は言う。
「拗ねてる場合とちゃうで。あいつが来よったんや。」
「あいつって?」
貧乏神はごくりと唾を飲み込む。
「死神や。」
「死神!」
貧乏神は青ざめた。
「坊んとこ、行くで。」
二人のおっさん神たちは、病室に向かった。
「あ、ちぃーっす。疫病神さんと貧乏神さんじゃないっすか!」
おっさんたちは唖然とした。
最近の死神は世相を反映して、こんなにチャラいのか。
「その坊は、堪忍したってもらえまへんやろか?」
疫病神が言った。
死神は信じられないという顔で見てきた。
「はあ?あんたら、疫病神と貧乏神っしょ?いわゆる人を不幸に陥れる神が
何言ってんの?」
死神は腹を抱えて笑った。
そして、硝子球のような冷たい目でこちらを見た。
「まあ、俺も死神の端くれっすから。ノルマ、きついんすよね。
これ以上邪魔立てするんなら、容赦しないっすけど?
あんたらくらいの低級の神くらい、俺一人で消すことできますよ?」
二人のおっさんは反論できなかった。
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