第二章 腐れ縁とはこのことか

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「この人、もう長くないっすよ。ていうか、ここまで生命力の弱い人、 よくここまで生きてこれたよね?不思議っす。」 二人は無力な自分たちを嘆いた。 「坊はもうダメなんやろうか。おばあちゃんに申し訳ないわ。」 疫病神は涙を流した。 「あきらめなさんな。手立てが無いわけじゃないけえ。」 貧乏神が珍しく、たくましく見えた。 「ほんまか?」 疫病神が言った。 「荒神様にお願いするしかない。」 「荒神様?」 「山口に何社か、荒神様が祭ってある神社がある。 そこの一番強い荒神様にお願いしてみよう。」 おっさん神二人はとある神社へ向かった。 神々しい、大きな鳥居をくぐり、本殿へ向かった。 「荒神様、お願いがございます。」 ご神像から荒神様が現れた。 「疫病神と貧乏神が雁首を揃えて何用だ。 ここはお前らなどが来るところではない。 早々に立ち去れ!」 疫病神が荒神様の足元にひれ伏す。 「お願いします。お話だけでも聞いたってください。 わしはお世話になったおばあちゃんの孫を助けたい、 ただそれだけなんです!」 貧乏神もひれ伏す。 「お願いします。場違いなのは重々わかっております。 人一人の命がかかっております。」 荒神様は少し置いて 「人の命とな?」 そう言った。 「はい。わしは、おばあちゃんとの約束で坊を守るって決めたんです。 疫病神が何を血迷ったことを言うかとお思いでしょうが、おばあちゃんは わしを疫病神やとは知らずに一心不乱にわしに願を掛けはりました。 孫の命を救ってくれと。わしはその熱意に打たれ、坊を助けました。 それからもずっとおばあちゃんはわしに感謝して、お参りを欠かさなかった。 わしは疫病神、感謝されることなんてなかったから嬉しかったんです。 ずっと坊を陰ながら見てきたのですが、この前、坊に見つかってしもて。 人間に姿を見られるなど、神失格です。坊には出て行けと言われました。 疫病神やから当然です。でも、わしは坊を守りたい。 あの若い身空で死ぬなんて、あんまりや。わしは坊を死なせたくないんです!」
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