自己完結上手な女

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「一度は消えた噂だけど、実際どうなのかは由宇がいつか話してくれると思ってた。でもその前に、次長がドイツ行きに反対したって聞いて、多分、間違いないだろうなって。あんたはあんたで、次長が好きだって認めたかと思えば、麻宮さんと会ったり、色々おかしな行動してたしね」 「それで、あたしたちのこと…?」 「うん。黙ってて、ごめんね」 今になって、どれだけ藤次郎に甘やかされていたのかがわかる。きっと、入社してからずっと、藤次郎はあたしを守ってくれていたんだろう。 もしかして、罪滅ぼしってやつ…なのかも。 九年前の。 「情けないなー…あたし。本当は何にもできないんじゃん」 ここにきて、激しく自己嫌悪。 今まで、それなりにうまくやってきたつもりだった。それなりに努力すれば勉強もスポーツもできたし、高校受験だって、大学受験だって成功した。そりゃ、センターは失敗した方かもしれないけど、身の丈に合った学校を選んだつもり。 恋愛だってそれなりにした。初めて男の子と付き合ったのは、中学三年生のとき。隣のクラスの大村くんという子で、サッカー部ではディフェンスってポジションだった。高校が別になってすぐ別れたけど。 その半年後には三年生の先輩と付き合った。その先輩も、大学に進んだらそっちで彼女を作ったみたいですぐに別れた。 そして、藤次郎と出逢って。 彼氏がいなくても、お隣には愉快で優しいお兄さんがいて。あたしは、恵まれていたはずなのに。楽しくて楽しくて仕方なかったはずなのに。 どこで間違えたんだろう。 どうして、自分で乗り越えられなくなったんだろう。
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