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「遊園地くらい、来たことあるよね」
彼女は即答えた。
「いいえ、初めて!」
この女性、なにもかもが初めてだ、でもなんでだろうか。
「蘭堂さん、貴女はこれまで、どんな生い立ちをしていたのですか」
そう訊くと、遠くを見るような、今までと違う表情をして彼女は答えた。
「実は私、白血病を患ってました、わりと小さいときから小学校にも行けず、ずっと入院していました」
驚いた、これが設定では無いことは明白だ、彼女の表情に偽りは無い。
「だから、外の世界の楽しい事は全部、本やテレビで知りました、手術やキツイお薬も我慢して、絶対病気治して、いつか必ずしたい事全部やってやるんだって願いました」
「それで治ったんだね」
オレは、だからここに居るって思ったが。
「いいえ、結局私は、だんだんと衰弱が進み、身体を起こすことさえ一人で出来なくなりました、とうとう最後の時が近いと自覚しました、そんな時、頭の中に聴こえたのです、惑星さんの声が」
こんな時に、また設定、とは思えなかった、ましてや彼女は嘘や冗談など最初から言ってないのだ。
「その声は協力をすれば死なずにすむどころか、健康な状態の身体をくれると言いました、不思議な感覚でした、死の淵というのもあったのかもしれませんが、私は確かに返事をしました、お願いしますと」
彼女は嘘をついて無い、嘘つきはここで泣かない、大粒の涙を流して、はた目も気にせず泣く事など絶対無い、泣きじゃくる彼女をオレは優しく抱き寄せた。
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