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どのくらい寝たのだろうか、時計の針は7時を指していたが、それが夜だか昼だかすぐには分からなかった。
ドンドンドン
「中川さーん、中川さーん、ちょっと見て下さい、中川さーん」
玄関を叩く音と、お隣さんの呼び声で、オレは起こされたのだ。
「なんですかっ」
オレはわざと荒げた声と一緒にドアを開けた。
「見て、いいでしょ!」
唐突に蘭堂さんが差し出したそれは、カレーライスだった、正真正銘ただのカレーライス、匂いで分かった。
彼女は得意気に言った。
「私が作ったんです、いいでしょ!」
なにがしたいのか解らなかった、世の中、理解出来ない人間は多々いるが、彼女もまた、その一人なのだろう。
すいません、今、忙しいので、そう言って断ろうと思った矢先、オレの腹が先に答えてしまった。
グウ~
「あら」
蘭堂さんは、はっとして、すぐ微笑んだ。
「食べたいですか、このカレーライス」
ニッコリ笑って目を輝かせて言った。
「是非、食べて下さい、さあ、さあ」
心では断りたいと思っていたが、カレーライスは大好物だったし、オレは断れきれなかった。
「いただきます」
結局オレは蘭堂さんを部屋にあげ、カレーライスをいただいた。
「ごちそうさまでした」
彼女はパチパチ拍手して訊ねた。
「美味しかったですか」
オレは彼女の真顔にドキッとした。
「うん、旨かったです、料理上手ですね」
「キャー本当ですか、初めて作ったのです、私、ずっと料理してみたいと思っていたんです」
初めての料理の出来映えに大満足している彼女を見て、やはり初めての一人暮らしが、余程嬉しくて、彼女は単にうかれているだけで、変な人では無いのかもとオレは認識を改めた。
「とっても嬉しいです!」
良く笑う彼女につられて、オレも笑った。
「あの、蘭堂さんは、お仕事何をなさっているのですか」
ありきたりの話題でも、オレはもう少し話を続けたくなっていた。
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