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扉を開けて聞こえた第一声に男は身を固くした。
「命に価値がある、とは、つまりどういうことだとキミは思う」
「……は?」
「僕が知る限り、それは三つある。まず一つが」
「おい」
「なんだい」
「誰だてめえ」
若者は被ったシルクハットを脱いで一礼すると、また頭に乗せて勝手に語り始める。
「今日から隣に越してきたジミー・スケルです。……で、一つ目だけど」
「帰れ」
「どうして。挨拶ぐらいさせてくれたって構わないだろう」
「間に合ってる。いいから帰れ」
若者はシルクハットのつばで目元を隠し、ニヤッと笑ったかと思えば息づきもせずに捲し立てる。
「ひとつめは人に慕われていることだねその点キミにはとても価値なんて無さそうだ。……ふう」
「あ? 殺すぞ」
「お、それはいい。僕が思う人の価値の中には『他者へ影響を与えること』というものがある。これが二つ目だ。殺せば相手の人生に多大なる影響を及ぼせるのだから、それも立派な価値と言えよう」
「……」
男は険しく瞼を半分降ろして男を睨み付けた。
「せっかく二つ目まで聞いたんだ。三つ目もどうせなら知りたいだろう、え」
終始ニヤニヤとしている若者の顔を見ていると、いっそのこと話をすべて聞き入れたやろうという気になった。
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