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ボサボサの髪がさらに乱れ、顔が顕わになった。
目の下には大きな黒い隈、口周りには無精髭。疲れ切ったような表情をしていた。
そんな男を見てさらに怒りがつのる。
「おまっ! てめぇ! 何がしてぇんだよ!!!」
「ひっ、い……」
男は怯えたような表情を見せるが関係なくまくしたてる。
「毎晩毎晩うっせえんだよ! てめえ、ふざけんなよ!!!」
「す、すいませっ……い、いつも、う、うるさ」
男は途切れ途切れの言葉を吐くが、それを遮る。
「今度またやったら警察呼ぶからな!!!!」
そう言い放つと、私は男を突き放した。男はよろよろと後退し、倒れた。そんな姿を一瞥すると、私は足早に部屋に入った。
当然の如く壁は鳴っていない。
変な見栄のせいで通報も何もできなかったが、やっとやめさせることができた。これで……これでゆっくり眠れる……。
そのまま私はベットに倒れこんだ。
どんっ
目が覚めた。真っ暗な部屋、スマホを見るとまだ午前2時。
壁の音が……。聞こえたような……。
104号室側の壁を見る。と、同時に。
どんっ
壁を叩く、音。
いまいち覚醒していない頭で考える。
104号室の……鈴木といったか……。まだ懲りていないのか……。もういい、警察を……。
どんっ
スマホを手に取り電話をかけようとした瞬間、違和感。
何かがおかしい。
何かがおかしい。
何かが、いる。
何が……?
どんっ
首を巡らせ。壁を再び、見る。
どんっ
どんっ
どんっ
叩いていたのは裸の子供。手にはカナヅチ。
どんっ
と、叩いたところで私の方を見た。目が大きい。異常に目が大きい。黒目が大きい。
無表情。近づく。子供。手にはカナヅチ。
カナヅチは振り上げられ、部屋に野太い声が響いた。
「どんっ」
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