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「君の事を好きだといったら、君は笑うだろうか?」
彼女は言った。
「壁の向こうから、毎晩、聞こえてきてたよ。私、耳、良いから。でも、学校で、顔も見たことあったから。今びっくりしてる」
僕は自分の感情が分からない。
嬉しさとは違う。でも、悲しくもある。
分からない。
「ねぇ、今日、学校、サボらない?」
彼女が低い声で言う。
僕は即、応えた。
「うん。着替えてくる。ちょっと待って」
僕は自宅に帰ると恐ろしい速度で制服を脱ぎ、それから財布だけを持って外に出た。
果たして、彼女はそこにいた。
「ごめんね」
と、彼女は言った。
別に構わないよ、とは言わなかった。
「こっちこそごめん」
「何が?」
彼女の問いに、僕は上手く答えることができない。
どう見てもおかしい状況なのに、僕は彼女に何があったのかを聞くよりも、言葉を交わせていることだけが嬉しいのだ。
最低だ。
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