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 でも、僕は知っているんだ。  彼女の家から時々聞こえてくる、怒声を。  物が壊れる音を。  悲鳴を。 『寒いけど、みんな、とってもあったかくて、大好きです』  リスナーのコメントを読み上げる彼女は、本当に嬉しそうな声で言った。  でも、他のリスナーは知らない。  多分、彼女が傷だらけなのは、リスナーでは僕だけが知っている。  彼女の家は、僕の家のように夜勤で親と会えないなんてことは無い。  ただ、帰ってくるのがとても遅いだけだと聞いた。  夜の10時や、11時だ。  だけど、それから、彼女がどんな扱いを受けているのか。  細かいところは分からない。  だけど、幸せじゃないことは分かっている。  一度、過去の放送で、彼女は言った。 『今日はごめんなさい。ちょっとへこんでます。昨日、ちょっと嫌な事があって』
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