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「さて娘。着替えが終わったら屋渡りの手伝いをしてやろう。契約した部屋は私の隣室なのだろうが、しばらくは私の部屋で寝起きするがよい。………なんといってもおまえと私は先ほど夫婦になったのだからな」
本当は私の伴侶になったのだと魍魎どもに周知するまでは私の傍に置いてやったほうがこの娘の身のためであるから同室したほうがよいのだと伝えようと思ったのだが、つい悪戯心で「夫婦」などと口にすれば期待通り娘は絶句してますます顔を紅潮させる。
言葉だけでこうも照れて恥じらうその初心な様がやはりどうしようもなく目に愉しいのである。
私は久方振りに己の心が軽く弾みだすのを自覚しながら、これから仮の伴侶として共に暮らすことになった娘に問うた。
「そいえば嫁御よ、まだおまえの名を聞いていなかったな。私は青蓮華というのが実の名だ。私はおまえの名が知りたい」
------------これが私と、後にまことの意味で心身ともに私の妻となる、400も歳下の人間の娘・花との馴れ初めである。
<終>
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