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「あれです! あれをくぐって右手にまっすぐ行くと、外に出られます」
皇太子の指差す方向には、通路の曲がり角に飾られている、国のエンブレムが施されている垂れ幕があった。そこには、通路を暖めるための暖炉があり、どうやらそこの中に横穴があるらしい。なるほどな、まさかこれが、外に通じているとは誰も思わない。
「エーサー、お別れだ。こんなことになってすまなかった」
皇太子は、エーサーの手を握り、涙を流した。
そうか、彼らは、幼少期より度々顔を合わせていた、言ってしまえば馴染み深い間柄なのだ。これが後生の別れになるとは……。
「うむ、恩に着るぞ、皇太子よ。儂のことは忘れ、真に愛する女性とともに、この国を発展させてくれ」
「ふふ、いけずなお人だ。私の気持ちも知らないで……」
エーサーは、最後に気丈に頷くと、側近から松明を受け取り、そのまま暖炉に消えた。フェイダとサロスも、あとに続く。
「アレン殿……。どうかご無事で……」
「皇太子、貴方は立派だ。貴方の成長をこの目で確かめられないことを悔やまれる。どうか、ご自身の責務を全うしてほしい」
「はい……!」
「……アレンよ。余は貴殿のことを忘れない。この国で貴殿らを再び迎えることはもはや叶わぬが、余と、この我が息子の心には、永遠に貴殿の名と共にあるだろう」
次期国王の手をしっかりと握り返し、有り難い詞を賜った俺は、国王に向き直り、深く頭を下げ、その場をあとにした。
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